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株式会社オレンジライフ代表取締役社長兼CEO上野山栄作のエッセー多事想論

2012/3 オレンジ通信 第32号プチ遭難

最近はコース外を自己責任で滑れるスキー場が増えています。歩いて登ってはコース外を滑るのです。誰も滑っていない自然の中の木々の間を滑っていると、不思議のアリスの国に来たような不思議な気持ちになりますし、危険な場所はアドレナリン作用でこのうえなく爽快な気分になります。このようなスキーをバックカントリーと言います。2時間登って滑るのは10分みたいな事をするのですから本当に雪山馬鹿だと思っています。
さて、今回はニセコスキー場に行った時の話なのですが、ニセコは簡単にバックカントリーが楽しめるスキー場です。リフトで登り少しだけ歩けばコースの横手の山や林の中等を自己責任で自由に滑る事が出来ます。ニセコのアンヌプリ山の頂上に登るにはリフトで30分、歩いて20分です。そこからコース外をかなりの距離滑れるので労力があまり要らずに滑れる本当に数少ない場所なのです。
その日、気温は高目で風が強く山頂に登る道も強風で歩きにくい程でした。頂上に着くと周りが全く見えない状況、まさにホワイトアウトです。しかし何度も来ている僕には自信があったので滑り始めました。周りは全く見えず、足下の雪がなぜかいつもより凍っていたのが気になったのですが少し経つと更に雪質が固くなりました。その瞬間、雪の表面が割れてきたのです。「これはヤバい!」この症状が大きくなると雪崩が起こる事を知っていたので身も凍る思いでした。
今僕が登って来た右に戻ろうと考え、右へ右へとトラバース(横に滑る)しても一向にいつもの場所に出ません。焦りと孤独感、それは僕から平常心を奪い去り本当にここはどこなのか?もしかしたらとんでもない場所にいるのではないだろうか?と錯覚に陥りました。
しばらくして森林が見えだしたので着実に下に降りている安堵感はありましたが、依然見た事もない場所で山の傾斜が無くなって来たのです。雪は新雪で板を脱げば股まで雪ですから歩いて進む事はほぼ不可能です。このまま止まってしまえば万事休す、と再び「青く」なりました。幸いにもゆっくりではありましたが板が進んだので、トラバースを続けていますと、かすかにリフトのアナウンスの音が聞こえました。「助かった」と思いました。そのまま尾根を3つほど超えるとやっとスキー場が見えたので無事に帰れた事を神様に感謝しました。翌日、もう一度頂上に行き確認すると今年は積雪が多く頂上の地形も例年と少し変わっていました。おそらく自分が思うよりはるかに北斜面に滑り降りていたようです。
この事で学んだ事は「思い込みに注意」「自信が有ればあるほど気付かない事がある」「冷静さを失ったらダメ」ってことでしょう。こんな当たり前の事をこの経験は「死ぬほどの恐怖」を持って体感させてくれたのです。分かっている事でも分かっていない。神様は僕に何を悟らせたかったのでしょうか?そう考えながら事業の舵取りをせねばと思います。・・・しかし怖かったよー(泣)